act10

 

話は数時間前にさかのぼる。
マルス惑連事務長が、身支度を終え、今にも帰宅しようとしたまさにその時、蒼白になった 一人の警備員が駆け込んできた。何より定時帰宅を邪魔されるのを嫌う事務長は、IDと鞄を手にしたまま、いらただしげに言った。
「何事だ?騒々しい!!」
「事務長…たった今…」
そこまで言ったとき、警備員の瞳は突然焦点を失い、彼自身も音を立てて倒れた。 その後ろから、長髪の軍人が姿をあらわした。
事務長が軍人と理解したのは、その 服装からである。見慣れた宇宙軍の軍服を彼は着ているのだが、どこか違和感があった。
「わざわざ案内ご苦労さん。事務長さんが帰る前で良かった」
そう言って男が笑ったとき、肩のあたりにある所属を示すエンブレムが目に入った。 通常の宇宙軍のそれとは異なる、ガラスの目を持つ鋼鉄の鷹のそれを見たのは、 事務長は始めてであった。だがそれが何を意味するのか、彼はすぐ理解することが できた。
「ど…Doll…!」
「そゆこと。たった今より惑連規定特例の二条にしたがってもらう」
特例の二条、すなわち非常事態における特務による直接指揮への移行である。 半ば失神しかけながら何かを探す事務長に、No’21はブラスターの銃口を向けた。
「宣言が為された以上、何かしたら反逆行為とみなされるけど、良いんですか?」
その言葉に、事務長はがっくりと肩を落とした。

巨大スクリーンや大型コンピュータが並ぶ、さながら要塞司令室のような中央管制室に No'5はいた。
彼のほかに動くものは、そこには何も無い。勤務していた職員たちは、 等しく本人たちが予期せぬ眠りに就いている。
奥の扉が開いて、No'21が姿を現した。
「事務長は押さえました。残りも皆こんな状態です」
等しく倒れ伏す人々の群れを見ながら報告するNo'21に、無言で頷いて応じると、No'5 は、再び端末の一つに向かった。
「支部長殿は表で待機中ですが、入ってもらいますか?」
「そうだな。その方が安全だ」
その言葉とほぼ同時に、No'5の打ち込んだパスワードがヒットした。画面上に次々と 図形が展開される。その中に、探すものを発見したNo'5は、ゆっくり立ち上がった。
「被疑者を発見した。保護に向かう」
「それなら自分が…」
それを制止し、まだ内部に制圧されていないものがいるかどうかのトレースを指示すると、 No'5は管制室を後にした。

 

 

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